マガ9editor's room

マガ9編集部発の情報やスタッフが書いたコラムを随時お届けします。

日めくり編集メモ 232

| トラックバック(0)

建築家の菊竹清訓さんが昨年末亡くなっていたことが年初に分かりました。菊竹さんは黒川紀章さんらとともに建築運動として「メタボリズム」を提唱したことで知られます。

最近では、おなかが出ていることを「メタボ」と言いますが、本来「メタボリズム」は新陳代謝のことです。菊竹さんは、破壊と建設を繰り返すのではなく、「建築及び都市は、新陳代謝を通じて成長する有機体でなければならない」などと説きました。この運動の代表作として挙げられるのが黒川さん設計の「中銀カプセルタワービル」。カプセルユニットを細胞のように取り替えることができ、これによって建築の母体は生き残ると考えたのでしょう。

菊竹さんは1928年、福岡県久留米市に生まれました。17歳で「国鉄久留米駅舎」コンペ1等になるなど若くして才能を発揮し、早稲田大学理工学部建築学科へ。在学中もコンペに次々入選し、卒業後竹中工務店勤務などを経て1953年に独立しました。1958年に竣工した自邸である「スカイハウス」は、まさにこのメタボリズムを体現したもので、1963年の「出雲大社庁(ちょう)の舎(や)」で日本建築学会賞を受賞、一挙に注目を浴びました。

しかし、巨匠となってからの菊竹さんの作品は、「ホテルソフィテル東京」や「昭和館」などのように大胆な造形のものが多く、景観にそぐわないなどとしてしばしば物議を醸しました。また、「アクアポリス」や「江戸東京博物館」、「九州国立博物館」など多数手がけた公共建築は大艦巨砲主義的で、一見これが新陳代謝と結びつくようには思えません。一時代を風靡したメタボリズムとは何だったのか、あらためて検証が必要なのかもしれません。
(参考資料:菊竹清訓建築設計事務所ホームページ

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://daily.magazine9.jp/mt/mt-tb.cgi/644