週刊誌には当落予想の記事が載るなど、今年想定される総選挙。野田佳彦首相は4日の年頭記者会見で「一票の格差の問題は解散権と結びつかない」として、違憲状態とされる衆院の一票の格差問題の是正前でも衆院解散・総選挙は可能との認識を示しました。
2009年の衆議院議員選挙の最大格差は千葉県第4区と高知県第3区で約2.30倍。これに対して昨年3月、最高裁判所は違憲状態と判断しました。それまで高裁段階で違憲4件、違憲状態3件、合憲2件と割れていましたが、最高裁がこのように判断したことで、一票の格差の是正は待ったなしの状況なのです。1994年の小選挙区比例代表並立制導入後、初の違憲状態との判断で歴史的なものといえるでしょう。
この格差の原因は、各都道府県ごとに定数1を必ず割り振る「1人別枠」という方式にあります。先述の最高裁判決でも、「人口の少ない県の定数が大幅削減されることに配慮しなければならなかった」と、激変緩和の意味合いがあったとして導入に理解を示しましたが、その上で「最初の選挙から10年以上が経過し、もはや合理性は失われた」として廃止を求め、立法的措置を講じる必要性にまで言及しています。
しかし、野田首相は年頭からこの問題を自らの解散権よりも下に置くと公言したわけです。民主党内の消費増税反対派を牽制するのが狙いなのでしょうが、普通選挙権という基本的人権にかかわる問題への認識の薄さに呆れるばかり。選挙を強行しても追認されるだろうと思っているのでしょう。違憲状態としても、選挙を無効としてそのやり直しを命じた判決はありません。司法府は立法府に「なめられている」のです。
(参考資料:一人一票実現国民会議ホームページ、「21年衆院選は違憲状態 一票の格差訴訟で最高裁大法廷」産経新聞2011年3月23日付)