今月5日、作曲家の林光さんが80歳で亡くなりました。労働・平和運動に関連した作品も多く、社会・政治と音楽の問題を探求し続けた行動的な音楽家でした。
林さんは1931年東京生まれ。10歳のときから尾高尚忠に作曲を学び、中高生の頃から学校演劇や俳優座の作曲家兼楽士として芝居の現場にかかわっていた「神童」でした。その後東京芸術大学作曲科に入学しますが中退し、間宮芳生さん、外山雄三さんとともに「山羊の会」を結成。『交響曲ト調』で芸術祭賞を受賞し、交響曲、室内楽、合唱、歌曲などジャンルにとらわれぬ音楽活動を続けました。
日本語のオペラ創作に尽力したことも林さんの功績。日本語と音楽の関係はいかにあるべきかを探り、1975年からオペラシアターこんにゃく座芸術監督と座付作曲家を務めました。1998年にはオペラの作曲活動全般に対し、サントリー音楽賞が授与されました。原民喜の詩を元にした「水ヲ下サイ」など合唱曲『原爆小景』も忘れられません。『私の戦後音楽史―楽士の席から』など著作も多数あります。
耳に馴染んだものでいうと、第2回モスクワ国際映画祭作曲賞の『裸の島』や現在公開中の『一枚のハガキ』など新藤兼人監督の映画音楽が有名です。また、NHK大河ドラマ『国盗り物語』『花神』『山河燃ゆ』、実写特撮とアニメの合体作『バンパイヤ』など枚挙にいとまがありません。筆者の個人的には、『裸の島』のラストシーンで島の空撮に被さるテーマ音楽には、殊に胸が締め付けられました。
(参考資料:林光の部屋、オペラシアターこんにゃく座ホームページ)