尖閣諸島沖中国船追突映像の流出をきっかけに検討が始まった、いわゆる「秘密保全法制」。政府はこの通常国会へ法案を提出する意向ですが、国民の基本的人権を侵しかねないような内容です。
昨年8月、「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」が秘密保全法制を早急に整備すべきである旨の報告書を発表しました。これは「国の安全」「外交」「公共の安全秩序の維持」を対象に、国の存立にかかわる情報を「特別秘密」とし、厳格な保全措置を取るよう提言したものです。この「特別秘密」に携わる職員などが情報を漏洩した場合、従来の法令に比べて格段に重い刑罰が法案に盛り込まれる可能性があります。
それでは、この「特別秘密」の範囲は誰が決めるのでしょうか。政府にとって不都合な情報を恣意的に指定したり、本来国民に必要な情報まで隠す手段に使われてはたまりません。この大震災や原発事故の対応を見ても情報隠蔽が不信を招いていることはご承知の通り。この秘密保全法制について、日弁連、新聞協会、民放連、新聞労連などは、国民の「知る権利」や報道の自由を侵害する恐れが強いとして反対を表明しています。
現在放送中のテレビドラマ『運命の人』は沖縄返還密約をめぐる記者と政府のせめぎ合いを描いています。ここで問われるのは「情報とは誰のものか」。当然主権者たる国民のものであるはずですが、現在まで政府は公開に、正直に応じようとしていません。まずは情報公開を徹底し、「知る権利」を確立することが先決です。先述の報告書にも、この法制は「その運用を誤れば、国民の重要な権利利益を侵害するおそれ」とありました。
(参考資料:秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議「秘密保全のための法制の在り方について」=pdf、News for the People in Japan「秘密保全法制 資料」)