先週、東京都内で開催された、ヨルダンの国会議員と弁護士を招いての緊急集会「原発 No, thank you!? ヨルダンの国会議員・弁護士は訴える」(主催:ミーダーン<パレスチナ・対話のための広場>)に行ってきました。
日本政府は現在、いくつもの国に対しての原発輸出計画を進めており、昨年12月にはベトナム、韓国、ロシア、そしてヨルダンへの輸出を可能にするための「原子力協定」が国会で可決されました。野田首相らは「相手国の希望」を強調しているものの、その相手国の人々がすべて、輸出を歓迎しているわけではもちろんありません。二院制を取るヨルダン国会の下院では、120名の議員のうち約80名が原発に反対の立場だといいます。
この日は、その下院の議員であるモオタシム・アワームレさん、ジャマール・ガッモーさん、そして核問題に詳しい弁護士のムナ・マハメラーさんが登壇。ヨルダンの原子力政策の現状やその問題点について、わかりやすく解説してくれました。
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非産油国のヨルダンでは、これまでエネルギーの大半を周辺国からの輸入に頼ってきました。紛争の絶えない中東地域にあって、戦争や政情不安によるエネルギー不安や価格高騰に悩まされることもしばしば。昨年の「中東の春」の後にも、エジプトからのガスパイプラインが爆破され、一時供給がストップする事態になったといいます。
そうした状況への打開策としてヨルダン政府が打ち出したのが、原子力発電の導入でした。原子力なら、燃料のウランはヨルダン国内で賄え、エネルギーの安定供給とコスト削減につながる、というのです。
しかし、3人はこの主張に真っ向から反論します。
ヨルダンは地震国である上、国土の8割以上が砂漠。通常でも深刻な水不足に悩む国柄で、原発を動かすのに不可欠な冷却水を十分に確保することは困難です(しかし政府は、だからこそ原発を導入し、そこでつくられた電気で海水を真水化して、エネルギー不足と水不足を一挙に解決するのだ、と主張しているのだそう)。さらに、すぐ隣のイスラエル・パレスチナをはじめ、不安定な情勢が続く地域だけに、原発がテロなどの標的になる危険性も否定できません。
ムナさんは「ヨルダンにとって、たしかにエネルギー問題の解決は重要です。しかし、それは原子力のような短期的解決に頼るべきものではないはず」と指摘。「こうした状況で、もし本当に日本からの原子力技術輸出が始まれば、ヨルダン人が日本に対して抱いているよいイメージも変わってしまうのではないか」との懸念を示しました。
ジャマールさんも、日本との原子力協定が締結されようとしている状況について「理解できない」と一言。「技術の輸出を考えるのなら、むしろそれは代替エネルギー分野において進められるべきです。福島はまだ『きのう』のことであって、多くの人や生き物が影響を受けている。その中でのこうした動きに、日本の国民は抵抗してほしい」と訴えました。
さらにモオタシムさんは、日本だけでなくいわゆる「先進国」の、原子力産業をめぐる姿勢そのものを批判。「日米などの大国は、自国内では原子力産業が行き詰まって、もはや発電所の新設もできなくなったので、それを途上国に押し付けようとしている。これは、技術の輸出によって途上国の自分たちへの依存度を高めようとする、新たな植民地政策のようなもの」と述べ、「日本は、なぜひどい被害をもたらすということがわかっているものを、他国へ輸出しようとするのか」と厳しく問いかけました。
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3・11の後、日本では急速に「脱原発」の声が高まり、デモなどの反対運動も各地で起こり始めました。その一方で、日本政府は途上国への「より安全な」原発輸出を方針として掲げており、少なくとも政府レベルではそれを受け入れようとしている国がいくつもあります。今回お話を伺ったヨルダンにしても、下院では原発反対が多数派である一方、国王によって議員が任命される上院では原発推進派が大勢。反原発運動は「ヨルダンが核技術を手に入れられないようにするための外国の陰謀」として扱われる傾向にあるのだそう。こうした現実を、私たちはどう捉え、どう向き合っていけばいいのか――。
2月25日、伊勢崎賢治さんを講師に迎えての「マガ9学校」では、東京外語大の伊勢崎ゼミ生たちとともに、世界各国の核・原子力政策について学びます。世界の国々は今、核について、原子力についてどんな姿勢を見せているのか、3・11の前と後で、世界では何が変わり、何が変わらなかったのか。もしかしたら、ちょっとショックな現実にも出合うかもしれませんが、まずは知ることから始めたいと思っています。ぜひぜひ、お越しください。(n)
第15回マガ9学校
「世界はFUKUSHIMAから何を学んだか?各国の核政策から考える」
2月25日(土)14:00?17:00
参加費:2000円(学生1500円、中学生以下無料)
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