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安全保障と「脱原発」

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 「世界中で『脱原発』の運動が起こったとしても、それだけで『脱原発』が実現することはあり得ない。それが、僕らのような安全保障をやる人間が考える、非常に冷たい現実です」

 これは昨年8月、伊勢崎賢治さんと大野更紗さんを迎えての「マガ9学校」で、伊勢崎さんが口にされていた言葉。都内では、毎月のように大規模な「脱原発」デモが行われていた時でもあり、正直なところ、ちょっとショックな言葉でした。

 

 「脱原発は実現しない」。なぜか。その理由として伊勢崎さんが挙げたのは、「原子力開発とは常に、核兵器開発と表裏一体のものだから」ということでした。

 「そして、各国の政府には常に『敵』への恐怖がある。例えば、世界が本当に『脱原発』をした上で、核技術が『テロリスト』の手に渡ってしまえば、次の『9・11』は核攻撃になるでしょう。その恐怖がある限り、『敵』という概念を乗り越えられない限り、核保有国の政府が『脱原発』を選ぶことはあり得ません」

 そうした背景を考えても、「日本のような経済大国が『脱原発』を選択する、つまりはエネルギー政策を180度変える、その影響は日本国内だけにはとどまらない」というのが伊勢崎さんの指摘です。日本政府が示す「<安全な>原発を輸出する」という方針を、政府レベルではそれを歓迎する動きが大きいことも、その事実を証明しているといえるかもしれません。

 そしてまた、伊勢崎さんはこの日、人が当たり前に持つ「子どもを守りたい」という思いが、結果的に政治利用されてしまうという危険性にも言及されていました。

 「子どもを大切にするという気持ちは、人間としての、生き物としての絶対的な正義ですが、それが集団で増幅するとちょっとおかしいことになる。ある『敵』がいる限り我々の子どもに将来はないという思いを集団で共有したときに戦争が起こる。戦争をやりたい人間は、それを利用するんです」

 今、多くの人が抱いている放射能への恐怖が、例えば誰かの扇動によって「<テロリスト>が原発を狙うかもしれない」という恐怖感にすり替わったら? 「安全」を求める思いが、一部で、「だから、軍事力をもって(いまだ廃炉には至っていない)原発を守らなくては」という方向へ向かってしまう可能性は、決してないとは誰にも言えないでしょう。

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 もちろん、放射能の危険性を認識し、だからこそ「脱原発」を訴える、そのこと自体を否定できるはずはありません。けれど、同時に世界ではその観点からだけでは理解しきれない、さまざまの「現実」が動いていることも事実です。

 2月25日の「マガ9学校」では、東京外大で学ぶ伊勢崎ゼミの学生たちが、アメリカ、ロシア、フランス、インド、パキスタン、ブラジルなど、世界各地の原子力・核政策について報告。それをもとに、伊勢崎さんとゲストの蓮池透さんによるトークを展開します。

 元東電社員の蓮池さんは、一方で「北朝鮮による拉致」という大きな問題に、被害者家族という立場で深く関わり続けてきた方でもあります。「脱原発」という運動を、政治利用の危険性を退けて持続させていくために、そしてより実現性の高いものにしていくために、私たちはどんな問題と向き合っていくべきなのか? ちょっと違う角度から考えてみたいと思います。

第15回マガ9学校

「世界はFUKUSHIMAから何を学んだか?各国の核政策から考える」

2月25日(土)14:00?17:00

参加費:2000円(学生1500円、中学生以下無料)

詳細・申込みはこちら

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