大阪の梅田界隈はいつの間にか摩天楼ばかりになってしまいましたが、西のほうは空が広く残っています。その下には「大阪中央郵便局」だった建物が。阪急百貨店が改装され、大阪駅前で戦前から残る大建築はここだけになってしまいました。
大阪中央郵便局庁舎の竣工は1939年。東京中央郵便局庁舎なども手がけた、当時逓信省営繕課に所属した吉田鉄郎による設計で、地上6階、地下1階建ての重厚な建物です。初期日本モダニズムの代表的な建築物として日本建築学会から保存の要望が寄せられ、日本におけるDOCOMOMO150選に選定されるなど、高い評価を得ています。来日したドイツの建築家ブルーノ・タウトが絶賛したこともありました。
郵政民営化によって一等地に建つ郵便局の敷地の活用が喧伝され、隣接ビルとともに解体して再開発の高層ビルを建てる計画でしたが、その後の不況を受け頓挫。日本郵政は、正面玄関部分を残して今月には取り壊し工事を始め、跡地をイベント広場や仮設の郵便局として暫定的に3年間使うとしています。しかしその後の見通しは不透明なまま。解体ばかりが先行して、現況を有効利用する気が見えません。
先月23日には、大阪中央郵便局を守る会主催のシンポジウム「大阪中央郵便局の活用を考える 保存と解体を超えて」が行われました。口コミやツイッターで2000人以上が参加し、この問題への関心の高さが窺えます。このシンポジウムの中で、ディスカッションの進行役を務めた建築家の高岡伸一さんの言葉が印象に残りました。「ある建物が取り壊しの危機になると保存運動を始めるといういたちごっこはやめたい」
(参考資料:「建築ジャーナル」2009年8月号、Ustream「緊急シンポジウム第2回 大阪中央郵便局の活用を考える 保存と解体を超えて」)