沖縄民謡の第一人者、知名定男さんが歌手活動を引退すると発表しました。突然のことに衝撃が走っています。
知名さんの芸歴55周年記念リサイタル「島唄百景」が3月25日、沖縄市民会館で行われました。この席上、思うように声が出ず、息子の定人さんや後輩の徳原清文さんらが歌いました。知名さんは「助けられ、ありがたい。お客さんは納得しないだろう。悔しい。この公演を最後に引退したいと思っている。考えに考えた結果」と語り、そのもどかしさに涙を流したということです。
知名さんは戦後の沖縄民謡界を牽引した故知名定繁(ていはん)さんの息子で11歳で登川誠仁さんに師事。1956年に「スーキカンナー」でデビューし、新世代の唄者として脚光を浴びました。東京や大阪での琉球フェスティバルで総合プロデューサーとして沖縄の若いアーティストを紹介し、自身でも2009年発表の『島唄百景』は第51回日本レコード大賞企画賞を受賞しています。
確かに沖縄民謡では、三線と唄が揃ってこそ。知名さんは「4〜5年前から思うような声が出なくなってきたので、引退を決意した」と話しています。しかしまだ66歳と、大先輩の登川誠仁さんや嘉手苅林昌さんほどの年齢ではありませんから、引退はあまりに惜しい。後進の育成ももちろんですが、咽喉の調子を整えてまた歌っていただきたいと思わずにはいられません。