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日めくり編集メモ 267

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那覇市の中心地・国際通りからちょっと離れた久茂地川沿いにある、プラネタリウムの丸屋根が目立つコンクリート打ち放しの建築物。久茂地公民館―かつて沖縄少年会館と呼ばれたその建物は、現在解体の危機にあります。

激化するベトナム戦争を背景に、米軍基地が集中し教育に適した環境とは言えなかった復帰前の沖縄。そんな中、子どもたちに夢と希望を与えようと、教職員やPTAでつくる「沖縄子どもを守る会」の呼び掛けで1966年に建設されたのがこの沖縄少年会館でした。この会の会長はのちに主席や知事となる屋良朝苗さん。1964年から始まった募金は内外から広く寄せられ、その総額は48万ドル(当時のレートで約1億7000万円)にもなりました。

竣工した少年会館は地上6階建てで、沖縄初のコンクリート打ち放しの建物でした。設計した宮里栄一さんは沖縄の未来をイメージしたということですが、この打ち放しと曲線の多い型枠づくりには施工上の大変な苦労があったそうです。最上階のプラネタリウムと天体望遠鏡は、見学申し込みが殺到するほどの同会館の人気施設でした。また、離島や本土からの子どもたちが修学旅行や交流などで泊まれるように、宿泊施設も完備されていました。

その後建物は那覇市に移管され公民館に。2010年、 市は老朽化と耐震強度不足を理由に取り壊しを表明し、昨年施設は閉鎖されました。解体が始まるのは時間の問題といわれていますが、むしろコンクリートの剥 落など危険な市立幼稚園・小中学校校舎の補修が先ではないでしょうか。何より、この後の建設計画が何も決まっていないまま、とりあえず駐車場にするという ことで計画を進める那覇市の姿勢に異常さを感じずにはいられません。

(参考資料:kumoji civic forum旧沖縄少年会館 存在価値・理念を評価 保存活用へ議論」琉球新報2012年1月22日付

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