不適切な公金の支出を住民が裁判に訴えても、議会が首長への賠償請求権放棄を決め、結果的に訴訟の意味をなくする例が相次いでいます。20日、最高裁はこうした議決に一定の制約を課す判決を下しました。
この裁判は神戸市などの住民が、自治体の首長が公金を違法に支出したとして訴えていたもの。下級審では住民側が勝訴し、首長を相手に賠償を請求するよう自治体に命じましたが、その後議会が、この請求権を放棄する議決をしたため、住民側が再び訴えていました。自治体の敗訴を見越しての、請求権放棄の議決が有効なのか、下級審の判断も分かれていました。
2002年の地方自治法改正で、住民訴訟を首長に対して起こせたものが、個人の負担が大きいとする首長の不満を受け、首長に返還を求めるように自治体を訴える形になりました。ここで、本来であれば行政をチェックすべき自治体の議会が、首長と馴れ合い、住民訴訟の制度自体を骨抜きにしているのです。地方議会にありがちなオール与党体制の醜い一面と言えます。
この判決は5件の訴訟が対象でしたが、うち神戸市の1件は住民側逆転敗訴となり、ほか4件が高裁へ差し戻しになりました。敗訴となった判決文には次のようにありました。「議決の適法性は裁判所が判断することになっており、直ちに住民訴訟を否定するとはいえない」。おや、「直ちに〜ない」とはどこかで聞いた言葉。このまま骨抜き状態が続けば法改正も必要でしょう。