沖縄・首里城公園の中、世界遺産でもある園比屋武御嶽(そのひゃんうたき)石門のすぐそばに、日本陸軍沖縄守備隊・第32軍司令部壕がありました。その第1坑道入り口にこの度設置された説明板の内容が沖縄を揺るがしています。
昨年8月、池田栄史琉大教授を委員長に説明板設置検討委員会が組織され、2回の会合ののち最終文案を提出しましたが、今年2月、「慰安婦」と「日本軍による住民虐殺」の文言を削除したと県から委員長に対して通告。驚いた委員会側はこの撤回を求めて意見書を提出し、県内マスコミによって広く報道されました。県民からは疑問と怒りの声が上がっています。
沸き起こった反対の声に対し、仲井眞弘多県知事はこの削除は自分の判断だと明言し、文言復活を拒否しました。外部から文案に抗議があったことを理由にしていますが、そもそも委員会を作り、専門家に委嘱したのは県側。そこで合意した文案を県の判断で修正し、委員の反対もある中で設置を強行するとは、行政手続きとしても稚拙の謗りは免れないでしょう。
この説明板は普通の観光案内板ではなく、沖縄戦の継承に関わるもの。委員会が研究成果を盛り込んでも一方的に削除されるとは、県はこれまでの施策方針を覆すつもりなのでしょうか。このニュースがあまり沖縄県外で報じられないのは、この削除が本土によるものではなく、県当局がその当事者であることに県民がショックを受けているからかもしれません。
(参考資料:池田栄史「合意なき32軍壕説明板〜強行設置への委員長見解」琉球新報2012年4月16〜18日付)