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日めくり編集メモ 280

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きょう5月3日は憲法記念日。現憲法が公布されて65周年です。先日自民党が「日本国憲法改正草案」を発表しましたが、その内容に疑問の声が湧きあがっています。

連合国の統治占領が解かれたサンフランシスコ講和条約発効から60年ということで発表した今回の改憲案。保守色が強いと言われますが、何よりも情けないのは、これまで、改憲派の小林節さんを含め、憲法学者が近代憲法の基本理念である「立憲主義」について何度も語っているにもかかわらず、自民党が未だに憲法を「国民を縛るもの」だと思っている点です。

この改憲案の102条には「全て国民は、この憲法を尊重しなくてはならない」とありましたが、基本的人権の本質を規定した現憲法97条と、公務員に対する憲法尊重擁護義務の同99条を削除してのものでした。また、政教分離原則や個人の尊重も削除される一方、新たに国旗国歌の規定が。こういったものを憲法の条文に入れるべきものか、はなはだ疑問です。

ご承知でしょうがおさらいすると、「立憲主義」とは、為政者の恣意的支配による権利の侵害に対抗するため、国家権力を制限しようとする原理のこと。言わば、「国民を縛るもの」の逆で「国家権力を縛るもの」なのです。伊藤真さんもこのコラムで説くように「憲法は人の心を領域を守るためにある」もの。今回の自民党改憲案はそれを侵すものに他なりません。
(参考資料:樋口陽一『個人と国家―今なぜ立憲主義か』集英社新書)

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