橋下徹大阪市長が囲み取材の場で民放の女性記者を罵倒した問題。あまりに激しい乱暴な言葉の陰に隠れて見えづらいですが、そこには「論理の乱暴さ」も潜んでいました。
5月8日の大阪市役所での囲み取材で、毎日放送(MBS)の女性記者が、大阪府が施行した君が代起立条例での起立斉唱について質問したところ、橋下市長が突如激昂。およそ20分にわたって記者を罵倒したのです。動画はこちらですが、見ていて気持ちのいいものではありません。最後には「社歌はあるのか。(社歌がないから)こんな記者になっちゃう」と言い放ったのには驚きました。よほど「歌」を人に歌わせるのが好きなのでしょうか。
橋下市長の言葉のあまりの乱暴さばかりが目に付くこの会見でしたが、よく聞くと論理的にも相当乱暴なことを言っています。記者の「斉唱強制に校長も戸惑っているがいかがか」という内容の質問に対して、最初は「校長のマネジメントに委ねる」と言っていたのが次第に論点をずらしていきます。誰が教職員に対して命令するかという逆質問で記者を攻め、それは教育委員会から全教員に職務命令が出されるのだ、と橋下市長は答えました。
しかし法律上、教育委員会は直属の上司である校長を飛び越えて職務命令を出すことは出来ません。にもかかわらず橋下市長、大市長らしからぬ命令口調で記者を罵り続けました。記者の準備不足をあげつらう声もありますが、だからと言って罵倒してよいということにはならないでしょう。論理のすり替え、脅し、不毛な議論を吹っかける…など、中島岳志さんが指摘するテクニックを橋下市長は駆使してこの女性記者を攻め上げたようです。
(参考資料:「詭弁術講座」秋原葉月Afternoon cafe)