子ども向け雑誌の嚆矢として知られる「コドモノクニ」。大判、多色刷りで当時の親子に人気を博しました。この雑誌についての展覧会「絵が歌いだすワンダーランド コドモノクニへようこそ」が、東京・多摩市の多摩美術大学美術館で開かれています(9月2日まで)。
「コドモノクニ」の創刊は1922年(大正11)1月。この時代、大正デモクラシーの自由な空気とともに、欧米のバウハウスやアール・デコなどのモダニズムが勃興し、その影響を受けた誌面になっています。創刊時の編集長・鷹見久太郎は1907年に東京社を創業して、破産した独歩社から引き継いだ「婦人画報」とともに、1912年にその姉妹版である「少女画報」の創刊を手掛けた人物。就学前の子どもと親を対象にした、ビジュアルと文学、音楽性を併せ持った革新的な総合絵雑誌でした。
鷹見のコンセプトは“子ども達に本物を、芸術性高きものを”。「コドモノクニ」に結集した画家、詩人、音楽家は綺羅星の如くです。画家は、武井武雄、岡本帰一、清水良雄、初山滋、本田庄太郎、川上四郎、深沢省三、竹久夢二、村山知義ら、詩人は北原白秋、野口雨情、西條八十、サトウハチロー、浜田広介、金子みすゞ、三木露風ら、音楽家は中山晋平らと、枚挙にいとまがありません。亀倉雄策や東山魁夷(当時新吉)など、若き日の大御所が自らの技術を磨いた雑誌でもありました。
第2次大戦中の1944年に用紙難で休刊するまで287冊が刊行されましたが、創刊編集長の鷹見は、1931年に「コドモノクニ」を離れて「子供の天地社」を設立し、「コドモノテンチ」を創刊しました。今回の展覧会ではこちらも併せて紹介し、両雑誌から原画を中心に約230点を展示します。その斬新さで、子ども向けという範疇を越えた雑誌づくりに情熱を注いだ鷹見の視点とともに、楽しさを満載した「コドモノクニ」の魅力に迫るこの展覧会。関連の座談会やワークショップもあるようです。
(参考資料:ハースト婦人画報社「コドモノクニ名作選情報サイト」、国立国会図書館国際子ども図書館 絵本ギャラリー「コドモノクニ」)