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日めくり編集メモ 308

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淡いタッチで描かれた子供たちの絵は、きっと誰もが見たことがあると思います。その画家、いわさきちひろの展覧会「いわさきちひろと世界の絵本画家たち」が、東京・新宿の損保ジャパン東郷青児美術館で開かれています(8月28日まで)。

いわさきちひろは1918年、福井県武生市(現越前市)に生まれ、翌年には東京へ。東京府立第六高女(現都立三田高校)在学中に日本画家の岡田三郎助に師事しますが、美術学校への進学は出来ませんでした。戦後、日本共産党に入党し、1950年にのちに同党衆議院議員となる松本善明と結婚。童画の世界で第一人者となり、つねに「子どもの幸せと平和」をテーマとした作品は見る人に深い感銘を与えてきました。1974年、原発性肝癌のため55歳で死去しました。

 

ちひろが亡くなって1年後には「いわさきちひろ記念事業団」が設立され、その2年後、自宅兼アトリエ跡に、赤レンガの瀟洒な「いわさきちひろ絵本美術館」が開館しました(現「ちひろ美術館・東京」)。当初の収蔵はちひろの作品だけでしたが、1991年からはアメリカ、ヨーロッパを中心に、世界の絵本作家の作品収集に努めています。今年3月現在、ちひろ以外のコレクションは、32カ国、202人の画家による17,100点の作品を収蔵しているということです。

 

今回の展覧会は「ちひろ美術館」のコレクションから、赤羽末吉、田島征三など馴染み深い日本の絵本画家や、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカなど25カ国52名の画家による絵本原画を加え、全体で約130点を展示します。いわさきちひろが亡くなって38年が経ちますが、未だに人気は衰えず、彼女の絵本は親から子へ、子から孫へと読み継がれています。ちひろや絵本画家たちの美しい絵に囲まれて、蒸し暑さからしばし解放されてはいかがでしょうか。

(参考資料:いわさきちひろ・松本猛『いわさきちひろの絵と心』講談社文庫、いわさきちひろ『ちひろのことば』講談社文庫)

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