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「非暴力行動」って何? 〜非暴力・不服従を考える〜

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 昨日官邸で行われた、首都圏反原発連合と野田首相はじめ官邸内の人々らとの面会 ネットで生中継された後、政府インターネットテレビのアーカイブ にもなっているようですが、ご覧になりました? それぞれの方が「脱原発」への断固とした意志、要求を突き付けていて、良かったですよね。その中でも私にとって印象的だったのが、イルコモンズさんの発言。「私たちは脱原発に向けてネバーネバーネバーギブアップ!」と共に「官邸前の抗議活動は、非暴力直接行動のオリンピックがあれば、まさに金メダルに値するほどのものだ!」とおっしゃっていた言葉、思わずメモをとったものです。


「非暴力行動」というキーワードが、ずっと気になっていました。言うまでもなく、この思想と概念は、インド独立運動の指導者、ガンディーが唱え実行したものです。2008年12月NHK教育テレビの「知るを楽しむ 私のこだわり人物伝」で、中島岳志さんがナビゲーターになって、ガンディーの人となりや、時代背景、そして「非暴力」「不服従」について、紹介されていました。すごく面白かったので番組のテキストも購入。で、そのテキストを、今回何度かひもといて読んでいます。


中島さんの書かれたテキストより、一部引用します。

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 ガンディーの「非暴力」は、時に「無抵抗」と誤解されることがあります。これは正確ではありません。ガンディーは決して無抵抗だったわけではないからです。むしろ「間違っている」と判断したことに対しては積極的に抵抗すると言ったほうが当たっています。ですから、「不服従」、あるいは「非協力」と表記するのが良いと思います。
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 官邸前のデモが巨大化していった時、警備も過剰になってきました。柵が張り巡らされ、官邸には近づけない。またどんなに盛り上がっていても、8時きっかりには、「解散」のコールがかかり、速やかにその場を離れる。このような行動に対して「なんでバリケードをやぶって官邸に突入しないのだ?」「抗議しているのだから、8時に終わるのではなく、なぜそのまま続けないのだ?」という意見がよく聞かれました。Twitterなどでは、「警察と示し合わせている」「権力側に利用されている」などあからさまに主催者を批難するような、つぶやきも見受けられました。
「熱くなってそのままバリケードに突入する」というのは、人の欲求としてあるのはわかります。「暴力」も人間の欲望の一つなんですね。

中島さんのテキストはこう続きます。
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 とはいえ、ガンディー単に「暴力を使わないことがよい」と言っているわけではありません。「暴力を捨てる勇気を持つことが重要だ」と言っているのです。暴行の場面に出くわしたら、止めに入らなければなりません。見て見ぬふりをするのは、非暴力の実践ではありません。ガンディーは「非暴力を臆病の楯にしてはいけない」とか、「暴力をふるっている人の足にすがってやめさせなさい」などと言いました。
 要するに。非暴力の「状態」ではなく、非暴力への「意志」が重要だというわけです。暴力は一種の欲望の発露です。この欲望に打ち克ち、自己をしっかりと制御することこそ、ガンディーにとっては重要な課題でした。


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 この文章は、2008年12月のテキストですから、もちろん3・11の前に書かれたもので、日本には「デモ」がまったくといっていいほどなかった時です。でも、今、読み返すと、官邸前デモや全国各地で行われている「反原発・脱原発デモ」での参加者のあり方、主催者たちの態度が重なってきませんか?
 
 なぜこれほどまでに、官邸前に人が集まり、継続されているかと考えた時、もちろん一番は「再稼働撤回させたい」という、私たちの強い思いだと思いますが、手法として「非暴力行動」だった、ということにつきると私は感じています。この方法だから参加したし人々は共感し力になったんだと思います。もちろん誰に指示されたわけでもなく、ガンディーの伝記をみんなが読んだわけでもない私たちが選んだ方法が「非暴力行動」だったということに、私はちょっと感動しているし、興味深く思っています。
 だって「非暴力・不服従」=「暴力に暴力で応酬してはいけない」「殴られても蹴られても耐えなければならない」「銃を向けられても丸腰で対面しなくてはならない」これって憲法9条の理念理念そのもの、ではないでしょうか? 
 そういうものが私たちの中に、日本人全員とはもちろん言わないけれど、半分ぐらいの人には浸透していたんだということを改めて感じたのです。

 3・11以降「非暴力行動」という言葉を耳にするたびに、おやっと興味をもってました。グリーンピースの佐藤潤一さん、山本太郎さんもインタビューで語っていましたし、佐藤さんの連載コラム「カエルの公式」にも「非暴力行動」をテーマにしたいくつかのコラムが書かれています。

 ということで、今週末8月25日(土)「マガ9学校」のテーマに「山本太郎さんと学ぶ非暴力行動って何?」という企画を立てたという経緯があります。なので、私自身もとっても楽しみにしているし、たくさんの人に参加して欲しいと思っています。



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ガンディーは一見、無防備とも思える「非暴力」こそが、結局「暴力」に勝ると言い続けました。そして、実際にそれこそが、インド独立にとってきわめて大きな力になったのです。
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 この理念と運動が、日本の本当の意味での市民が勝ち取った「自立」と「民主主義」をなしえるための、大きな力になると、私も信じています!

 なお中島さんのこのテキストには、今のインドの現状を考えると、ガンジーの思想の体現からは遠く離れている様々な暴力的な問題の指摘や、ガンディー自身も聖人なんかではまったくなく、欲望にまみれた人間くさい人だったというエピソードも書かれていて、興味深いものです。(水島さつき)

☆出典:「NHK知るを楽しむ 私のこだわり人物伝」(2008・12月/2009年・1月 NHK出版)

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