週刊朝日で始まったばかりの、橋下徹大阪市長を題材にしたノンフィクション「ハシシタ 奴の本性」。直後から賛否両論を巻き起こしていましたが、版元が突如お詫びを発表し連載も中止になりました。
週刊朝日10月26日号(16日発売)から始まったこの連載の著者は、『東電OL殺人事件』などで知られるノンフィクション作家の佐野眞一氏。その筆鋒は実に苛烈です。今回の連載も、日本維新の会旗揚げパーティーの描写から始まり、その場に集まった人々を「ダフヤもどきの連中」「その醜悪さは正視できなかった」、また橋下氏を「裏に回るとどんな陰惨なことでもやるに違いない」と、佐野氏独特の筆致で描写しています。
しかし問題になったのは、記事後半の橋下氏の出自に関する部分でした。確たる理念のない橋下氏の政治手法を検証するつもりはないとした佐野氏は、そのあまりにも非寛容な性格はどこから来たのかを考え、橋下氏のルーツや親族を取材し、発表したようです。昨年の週刊文春などが行った、出自と結び付けての反橋下記事とは違ったものを期待していたのですが、記事を守るだけの度量が版元にはありませんでした。
橋下氏はしたたかです。自らの市職員への思想弾圧などを棚に上げて、この記事を差別問題だとして逆襲に出ました。週刊朝日は、このような反応をなぜ予想していなかったのでしょうか。言論を世に問う、ましてや橋下氏の人格をめぐる記事の掲載はそれなりの覚悟が必要と分からないわけではありますまい。表紙に橋下氏の写真を使うなど、鳴り物入りの新連載だったはずが第1回で終了とはお粗末にもほどがあります。