デモが出来る。自由に意見を言える。自由にものがかける。憲法21条で保障された「表現の自由」は重要なものです。東京都知事選の告示日を前に、石原都政下でこの表現の自由をめぐって問題となった「漫画・アニメ規制」を振り返りたいと思います。
2010年2月からの都議会に提出された「東京都青少年健全育成条例」改正案は、フィルタリングの推奨と解除時の書面提出の義務化とともに、漫画・アニメのキャラクターも「非実在青少年」として「不健全」性の基準に含める内容だったため反対意見が噴出。さらには自主規制に都民の監視義務まであって、広範な悪書狩りが行われかねない内容でした。単純所持まで事実上禁じるこの条例案は反対運動もあって、6月に廃案となりました。
次の11月からの都議会に、内容を修正した改正案が提出されました。今回は「非存在青少年」の文言を削除したものの、漫画・アニメを狙い撃ちにした「非実在性犯罪」規制に特徴があります。即ち刑罰の対象になるような性行為を「描くこと自体」を規制するものです。漫画・アニメ業界を中心に広範な反対運動が起きましたが、前回の採決で反対した都議会民主党が、自民・公明両党とともに賛成したことで12月15日に可決成立しました。
本来この改正案の主眼は「児童ポルノ規制」であり、被害を受けた子どもの救済だったはずが、実在の被害者のいない漫画・アニメを対象にした表現規制に形を変えてしまいました。こういったものは歴史を顧みても、拡大解釈されがちなもの。この先「性犯罪」だけに限られる保証はなく、もし違法行為を描くことすら規制されたら、海賊や泥棒の登場する漫画やアニメはどうなるのでしょう。次の都知事には表現の自由を守る人を選びたいものです。