政党機関紙を配布したことで罪に問われた国家公務員2人に対し、最高裁第二小法廷は無罪と有罪に分かれた判決を出しました。一定の政治活動を認めた点は評価できますが、判決が分かれた理由は何でしょうか。
休日に政党機関紙をマンションなどに配ったことで国家公務員法違反に問われた2人は、元社会保険庁職員と元厚生労働省課長補佐。「政治的中立性を損なう恐れが実質的に認められる」かどうかが判断の分かれ目だったようで、その地位の高さによって後者が有罪となりましたが、勤務時間中に職務権限を使ったわけでもない行為に、そこまでの違法性があるのでしょうか。
国家公務員法が制限する政治活動が広すぎるとの指摘はかねてからあり、そのうえ刑事罰まで科す国は欧米には見られません。国連の自由権規約委員会からは2008年に「懸念」が表明され、日本政府に表現の自由への不合理な制限を撤廃するよう勧告したほどです。被告となった2人は、同法の規定が、憲法が保障する「表現の自由」に違反すると主張して争ってきました。
最高裁はこれを事実上の判例変更としたのかもしれませんが、本来であればきちんと判例を変更するため大法廷を開くべきでしょう。また、旧社保庁職員に対して行われた、警察による長期間の尾行など、特定の政治団体を支持する公務員への狙い撃ち的捜査手法は指弾されなくてはなりません。これに対し「現場に萎縮はない」と言い切る捜査員に、うそ寒いものを感じます。
(参考資料:「『捜査現場に萎縮はない』警視庁捜査員」東京新聞2012年12月8日付)