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日めくり編集メモ 380

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明日12月26日は、詩人・石垣りんさんの命日です。女性詩人として生活と社会を見据えた、平易なことばで語られる詩風で知られ、教科書にもその作品は多く収録されました。

石垣さんは1920年東京生まれ。3歳で関東大震災に遭遇しますが、生母はその時の怪我がもとで、翌年に亡くなりました。高等小学校卒業後すぐに日本興業銀行に事務見習いとして就職し、1975年まで41年間同行で勤め上げ、家族の生活を支えたのです。初任給を貰って「これで読みたい本が買える」と喜んだ石垣さんは、仕事の合間を縫って『少女画報』『少女文苑』などに詩を投稿し始めました。

彼女が注目されるようになったのは戦後から。銀行員詩人と呼ばれ、職場の同人誌などにも自作を発表。1959年に、自分の快気祝いに配った第1詩集『私の前にある鍋とお釜と燃える火と』が高い評価を受けました。1969年『表札など』でH氏賞、1971年『石垣りん詩集』で田村俊子賞、1979年『略歴』で地球賞を受賞。またNHK全国学校音楽コンクールの課題曲「この世の中にある」を作詞しています。

石垣さんは2004年に亡くなりますが、その5年後、静岡県南伊豆町立図書館に「石垣りん文学記念室」が開設されるなど、その詩は親しまれ、広く読み継がれています。「戦争の記憶が遠ざかるとき、/戦争がまた/私達に近づく。/そうでなければ良い。」(『弔詩〜職場新聞に掲載された一〇五名の戦没者名簿に寄せて〜』)などの作品を読むと、まだまだ私たちが彼女の詩に学ぶことは多いようです。

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