人類の遺物や遺跡を通じてその変化や活動を研究する考古学。これに対し「考現学」は現在あるものを観察研究するものですが、広島市現代美術館で「路上と観察をめぐる表現史—考現学以後」と題された展覧会が開催中です(4月7日まで)。
「考現学」は民俗学者・今和次郎が1923年の関東大震災後、バラックをスケッチしたことをきっかけにして提唱したもの。現在の社会風俗を定量的、組織的に調査研究し解析しようという学問です。このことで今は、師匠である柳田國男から破門されてしまったとのこと。その後1986年発足の路上観察学会などによってこの言葉は生き返り、人々の生活や都市の姿を見つめ直す活動はさまざまに展開されています。
ホーローからネオンサインまでの看板や、公共建造物のデザイン、さらには都市空間やモードではない衣服といった見過ごされがちなものに価値を見いだし、それらを創作物として積極的に観察/発見することで「表現」にまで昇華する様子を検証するのが今回の展覧会であるとのこと。表現とは、集会・結社や芸術・芸能だけではなく、ありとあらゆるものを差し出す行為自体であることに、改めて気づかされます。
本展では、都市論、建築学、表象文化論、美術批評などさまざまなフィールドの論考が加えられます。出品作家・グループは、今和次郎、吉田謙吉、木村荘八、岡本太郎、コンペイトウ、遺留品研究所、赤瀬川原平、トマソン観測センター、林丈二、一木努、路上観察学会、大竹伸朗、都築響一、チーム・メイド・イン・トーキョー(アトリエ・ワン+黒田潤三)、ログズギャラリー、下道基行ほか。実に興味深い展覧会です。