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日めくり編集メモ 410

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3月6日に東京高裁、翌7日に札幌高裁で、1票の格差を是正しないまま昨年12月に行われた衆議院選挙のやり直しを求める裁判の判決があり、ともに「違憲」とされました。衆議院議員の正当性が問われています。

2011年、最高裁は最大格差が2.30倍だった衆院選を「違憲状態」とし、選挙区割りの見直しを迫っていました。しかし格差是正の歩みはのろく、12 月の選挙では最大2.43倍もの格差で行われました。裁判所の判断が「違憲状態」から「違憲」へと一歩踏み出した格好です。しかし、選挙の無効にまでは踏み込みませんでした。

「事情判決の法理」という法律用語があります。行政処分や裁決が違法だったとしても、取り消すと公益を著しく害する、あるいは公共の福祉に適合しないと裁判所が判断した場合、その取り消しを行わないとする考えです。本来、行政事件訴訟法上の制度なのですが、法理として1票の格差についての訴訟に適用されているのです。

これだけ司法が苛立ちを見せているのに、国会の格差是正への意欲が見えません。今後も全国の高裁・支部で判決があり、「違憲」判断が多く示された場合、最高裁が1976年に「事情判決の法理」を用いて選挙を有効にした判例が覆される可能性があります。そこまでの判断を示さなくては、司法は「なめられた」ままでしょう。

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