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日めくり編集メモ 429

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東京都が推進する事業「東京防災隣組」。災害発生時の共助の仕組みとして組織したようですが、このネーミングには驚かされました。「隣組」が何を意味していたのか知っているのでしょうか。

東日本大震災以降、人々の防災意識は高まっています。これを機に平素からの防災教育や危機意識の喚起、さらには災害発生時の地域防災力や自助・共助の強化を自治体が図ろうとする、ここまでは理解できます。しかし、「隣組」という ネーミングには、かつてそれが「相互監視組織の末端」であったことへの配慮のなさが表れています。

「隣組」は1940年、内務省の訓令 「部落会町内会等整備要領」の通達により組織されました。それまでも隣保組織はあったのですが、この訓令によって基準化され、また国策を隅々まで浸透させる役割を担っていきます。消費経済統制と相互監視によって、個人生活の領域まで拘束していくやり口は、江戸時代の「五人組」の流れを汲むものでした。

1942 年にはこれらが大政翼賛会の指導下に置かれ、「隣組」は名実ともに上意下達の最下部に。私生活への干渉と連帯責任の強制は、日常生活の息苦しさをもたらすものでした。こうした過去を知らずに名付けたとでもいうのでしょうか。「作家」を3代続けて知事にいただく都が、こうした言葉の使い方に鈍感であるとは信じたくないものですが。
(参考資料:『昭和(5)一億の「新体制」』講談社、『国史大辞典』吉川弘文館)

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