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日めくり編集メモ 440

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風光明媚な広島県福山市の鞆(とも)の浦。ここにある「鞆の津ミュージアム」で、死刑囚の描いた作品を集めた企画展「極限芸術〜死刑囚の表現」が開催されています(6月23日まで)。

古くから瀬戸内海の港町として栄え、最近では映画『崖の上のポニョ』の舞台になったといわれる鞆の浦。乱開発の荒波に洗われることなく、幸いにも懐かしい街並みが残っています。ここにある築150年の旧家の蔵が美術館「鞆の津ミュージアム」として生まれ変わったのは2012年春のこと。展示されるのは、「アール・ブリュット」と呼ばれる超個人的発想から生まれた不思議な表現の芸術です。

4月20日から始まっているのが企画展「極限芸術?死刑囚の表現」。同ミュージアムアートディレクターの櫛野展正さんが昨年広島市の展覧会で見た死刑囚の絵に衝撃を受け、この展覧会を企画しました。林真須美死刑囚(毒物カレー事件)、岡崎(現姓宮前)一明死刑囚(坂本弁護士一家殺害事件)ら37人の手による300点ほどが展示されており、中には既に刑が執行された人の作品もあります。

この展覧会には開催前に否定的な声も寄せられました。しかし展示作品の意味はあえて説明せず、来館者に感じてもらうということです。法務省によると現在の確定死刑囚は136人。いつ刑が執行されるか分からぬまま、反省と悔恨の中、極限状態に置かれている彼らの絵は、純粋な思いの発露なのでしょう。「人はなぜ表現するのか」という疑問へのひとつの答えが見つかるかも知れません。
(参考資料:「『極限芸術』展を開催=死刑囚の絵など300点異色の試み、20日から広島で」時事ドットコム2013年4月15日付)

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