緑まぶしい洛北・衣笠山の麓にある立命館大学。この一角にある国際平和ミュージアムで、「ジミー・ツトム・ミリキタニ回顧展-日系人強制収容所と9・11を体験した反骨のホームレス画家-」が開かれています(7月20日まで)。
ジミー・ツトム・ミリキタニ(日本名:三力谷勤)は、1920年米カリフォルニア州で生まれました。3歳で帰国し18歳まで広島で育ちますが、強まる軍国主義を避け、画家になる夢を抱いて再び米国へ。しかし1942年、強制収容所に送られ、米国市民権を放棄させられました。終戦後も市民権はなかなか回復されず、各地を放浪。住み込みの料理人などをして働いていましたが、1980年代に職を失い、ニューヨークでホームレスになってしまいます。
2001年1月、路上生活しながら猫やヒロシマを題材に絵を描いていた80歳のミリキタニは、映画監督のリンダ・ハッテンドーフと偶然出会います。ハッテンドーフは、自分とミリキタニの交流と、その半生を描いたドキュメンタリー映画『ミリキタニの猫(The Cats of Mirikitani)』を発表。トライベッカ映画祭、パリ映画祭などで賞を受賞するなど、世界中で評価を得ました。最晩年はミリキタニもケア付きの住まいを得て、2012年、92歳で亡くなりました。
今回の展覧会では、米シアトルのウィング・ルーク博物館が所蔵する30点のミリキタニ作品と、彼が体験した歴史の解説を組み合わせて紹介するということです。その厳しい体験の中にありながらユーモアを持ち続けて描いた可愛い猫や、在米日本人・日系人の強制収容、故郷広島の被爆、さらには9・11などの作品を通して、歴史の傷が個人に与える深い影響や、それに立ち向かう力についても考える機会になるのではないでしょうか。
※ 特別企画展示「丸木スマ展-生命(いのち)をみつめて-」が同時開催されています。