7月1日から、問題点だらけの「東京都青少年健全育成条例」の全面施行が始まりました。これは言わば、漫画などを狙い撃ちにした「表現弾圧条例」です。
この条例の最大の問題点は条文のあいまいさです。「不当に賛美、誇張」とはどの程度のことなのか分からないので、恣意的に拡大解釈される余地があります。また、「性に関する健全な判断能力の形成を阻害する」との学問的知見について、都側は「見出していない」と答弁しました。さらに、わざわざ「実写は除く」としたことでも分かるように、漫画・アニメ・ゲームを狙い撃ちにしたものと言えるでしょう。
昨年12月、300件以上といわれる陳情・請願があったように注目を集めながらも、最大会派民主党が賛成にまわり成立したこの条例。施行後もその規制のラインが見えず、どのような運用をしてくるのか漫画家や出版業界は戦々兢々です。こうして「萎縮」と「自主規制」ばかりがはびこってしまっては、漫画は次第に魅力を失っていくでしょう。漫画家がすり抜けて描いたとしても、流通するとしないのでは大違いです。
小欄の第78回でも書きましたが、規制する側にとって俗悪漫画は突破口であって、本丸は「表現の自由」をなくし、統制することと思われます。実際の被害児童を救済せず、道徳を法制化し、表現を規制する「児童買春・児童ポルノ禁止法案」を自民・公明両党が国会に提出する動きは、この規制と無縁ではありません。絶えざる監視をしていかないと、日本の漫画文化は潰え去ってしまう可能性が充分にあるのです。
(参考資料:「弁護士山口貴士大いに語る」山口貴士ブログ、「石原都政『東京都青少年健全育成条例』との戦いはまだ終わっていない!!」週刊プレイボーイ2011年vol.28)