昨日9月8日、東京都新宿区の日本青年館で講演会「さようなら原発」が行われ、多くの人が参加しました。来る19日の大規模集会「さようなら原発5万人集会」に向けてのプレイベントです。
この集会の呼びかけ人として鎌田慧さん、大江健三郎さん、落合恵子さん、内橋克人さん、賛同人として山田洋次さんがそれぞれ壇上に立ち(落合さんは詩の朗読も)、呼びかけ人の澤地久枝さんからのメッセージも読まれました。皆さんのお話も素晴らしかったのですが、その間に挟まれた崔善愛(チェ・ソンエ)さんのピアノ演奏とそのお話は殊に心を打つものでした。演奏曲はすべてショパン。まず「幻想即興曲」を華やかに、次いで今回の震災の犠牲者を悼んで「ノクターン遺作」を美しく奏でます。
崔善愛さんは21歳のとき、指紋押捺を拒否してアメリカに留学したため、その後14年間永住権を奪われました。日本には1992年まで外国人に対して指紋押捺制度があったのです。崔さんは言います。「日本という国家は無情だと思いました。一人一人は繊細なのに、組織の一員となるとなぜそうなってしまうのか、分かりませんでした 」。そして衝撃を受けたこととして、福島の子供の首にお守のように線量計が掛けられていることを挙げ、その絶望、怒りをぶつけるように「革命のエチュード」を弾いたのです。
また崔善愛さんは今回の原発事故に登場する「専門家」にも疑問を呈しました。彼らは、「コンサートに来てバッグの中のスーパー袋を音を立てて探し続け、周りが見えなくなっている人と同じ」なのではないかということです。そして「音楽よりも一人の子どもの命が大切」と言って音楽活動をやめたパブロ・カザルスを例に引いて、音楽家も「専門家」にならないよう自戒しているようでした。最後に今回の講演会の題にちなんで「別れの曲」をしっとりと演奏しましたが、まさに原発への挽歌のように聞こえました。
追記:小欄175回でとりあげた沖縄・八重山地区の教科書問題続報です。採択地区協議会の選定後、石垣市と与那国町はこの選定を支持しましたが、竹富町が不支持となりました。地区で統一できなければ教科書は無償とならないため、3市町で協議を続けていましたが、全教育委員で構成される地区教育委員協会の8日の採決によってさきの選定を覆し、育鵬社版を不採択とし、東京書籍版の採択を決定しました。