大阪市は市職員に対して、政治活動や組合活動等についての「アンケート」を実施しました。しかし、これはまさに「思想調査」。不当労働行為であり、表現の自由や思想・良心の自由といった憲法上の権利、さらには個人のプライバシーを侵害するものです。
この「アンケート」は、任意のものではなく業務命令。実名での回答を求めるとともに、組合活動や政治活動への参加や勧誘について密告を勧奨しており、この内容によって処分を行うと恫喝しています。回答項目には「組合加入の有無」や「組合活動への参加」、「組合に誘った人の名前」などが並び、実に細かな内容です。第三者委員会が実施するとはいえ、処分を明言しているのですから、結局は市当局がアンケート内容を把握して、橋下市長に好ましいか否かを分類していくことは間違いありません。
大阪市には労働組合が複数あり、その一部組合の勤務時間内の活動が問題になりましたが、これを受けての「アンケート」だとしても、「思想調査」を行ってよいはずがありません。違憲性・違法性が重大なだけに、既に日弁連はじめ各方面から抗議が寄せられていますが、橋下市長は確信犯的に「アンケート」を進めているように見えます。民主主義への重大な挑戦であるにもかかわらず、マスコミの伝え方が鈍いのは不思議でなりません。「橋下旋風」に逆らいたくないとでも思っているのでしょうか。
為政者の暴走を食い止めるには国民の良識が必要ですが、少なからぬ人々がその尻馬に乗っているのには唖然とさせられます。先にも小欄で書きましたが、この「アンケート」問題も、まさに橋下氏特有の、「公務員憎し」の感情を煽って、人々のネガティブな感情を動員させる手法です。密告なら気に入らない者を陥れることも可能。これが是認されるのであれば、以降大阪市役所内は、橋下市長への忠誠競争とともに面従腹背が跋扈し、職員同士の足の引っ張り合いと疑心暗鬼が渦巻くことでしょう。