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日めくり編集メモ 249

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JR八王子駅北口から歩行者専用のユーロードをのんびり歩くと八日町の交差点。さらに甲州街道をもう少し西へ行ったところにある八王子市夢美術館で、「加藤久仁生展」が325日まで開かれています(この後同展は、愛知県刈谷市と鹿児島市を巡回する予定です)

加藤さんは1977年、鹿児島県生まれ。八王子市にある多摩美術大学グラフィックデザイン学科在学中にアニメーションの自主制作を始めました。卒業後、映像制作会社「ROBOT」へ。この会社は映画『ALWAYS 三丁目の夕日』やゲーム『鬼武者』シリーズで知られます。この社内にある「ROBOT CAGE」に所属し、NHK「みんなのうた」やCM、携帯配信動画などさまざまなメディアでアニメーションを制作。また『或る旅人の日記』が2004年フランス・アヌシー国際アニメーション映画祭で入選するなど、高い評価を受けています。

 

中でも有名なのは2009年米アカデミー賞短編アニメーション賞を受賞した『つみきのいえ』でしょう。登場人物は老人ただひとり。彼の家は水没しつつあり、それを避けるために積み木のように家を上へ上へと建て増したものです。ある日、お気に入りのパイプを落としてしまった老人は、拾うために水の中へ潜りますが、そこで見たものは、かつてこの家で一緒に暮らしていた家族との思い出…。彼は階下へ潜るたびに回想していくのです。この作品はアカデミー賞に先立ち、2008年のアヌシー国際アニメーション映画祭でも最高賞を受賞しました。

 

静けさの漂う映像心温まるストーリー世界各地で大きな喝采を浴びた『つみきのいえ』ですが、この制作には1年間を費やしたということです。展覧会では、この作品が生まれたきっかけのスケッチや絵コンテなどを展示し、その制作の過程を辿ることができます。また、本展のために制作した、7編からなる新作短編アニメーション『情景』の上映もあるとのことです。多摩美大在学中に師事したという同大教授だった片山雅博さんが亡くなってちょうど1年。あの世から片山さんも、加藤さんの活躍に目を細めていることでしょう。

(参考資料:八王子市夢美術館ホームページROBOTホームページKUNIO KATO WEB SITE

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