大飯原発再稼働の方針を決定した野田政権に対して、威勢よく批判を続ける橋下徹大阪市長。その舌鋒に溜飲を下げる向きもあるでしょうが、その発言をよく見る必要があります。
橋下市長は再稼働の8条件として、原発から100キロ圏内の自治体との安全協定締結、国民が信頼できる規制体制の設立、新たな安全基準に基づいたストレステストの実施などを列挙。しかし、政府方針に反発したと伝えられる会見で、この8条件について「(再稼働方針が決まれば)出しても意味がない」とも述べています。事実上政府方針を容認したと思われてもおかしくない発言です。脱原発をダシにして、ボロが出ないうちに選挙に持ち込みたいだけなのでしょうか。
市政よりも国政問題に情熱を傾注する橋下市長は、小欄でも触れたアンケート問題や、職員リスト捏造問題も自分では責任を取らず、謝罪の言葉もないままうやむやにしようとしています。その一方で、大阪市音楽団の楽士36人を分限免職にするような、相も変わらぬ公務員叩き。そして「君が代」を歌う口元の動きを調べる異様さを当然と言い放つ感覚。大阪市役所での「今日からあなたたちは市民に命令できる立場だ」 との訓示には開いた口がふさがりませんでした。
「閉塞感を打破したい」「何かを変えてくれる」と思って橋下氏に投票した大阪市民は、現状をどう思っているのでしょうか。しかし、彼の手法はまさに独裁であって、民主主義の対極にあります。民主主義とは時間をかけて多数の合意を形成していくものであり、いわばたいへん「面倒なもの」。これが機能せず、有権者が「市長に任せておけば楽だ」と考えたままでは、橋下氏の独裁をいよいよ補完していくことになるでしょう。彼特有の罵倒や非難、暴言とともに。