山口県・上関原発の埋め立て工事に反対する人たちの「妨害行為」を禁じた仮処分が、最高裁判所で確定しました。その決定の際に最高裁が「妨害予防請求権」という言葉を使ったことがちょっと気になりました。
中国電力(中電)が山口県上関町に計画している上関原発。地元の粘り強い反対運動で計画は事実上頓挫し、県知事も埋め立て免許の延長を許可しない方針で、免許の失効は確実視されています。しかしその一方で、中電による住民へのスラップ訴訟が多く起こされてもきたのです。陸上での「妨害行為」を禁じる仮処分については、中電は訴えを取り下げたのですが、海上については最高裁まで持ち込まれました。
妨害予防請求権は法律用語で、「物権的請求権」のひとつ。大辞林には「物権を有する者が、物の支配に対して将来妨害されるおそれがある場合に、そのおそれを除去するよう請求する権利」とあります。実際に妨害されている場合は「妨害排除請求権」ですから、今後は公共工事への反対運動に、この権利を“予防的に”濫用されかねません。今回の最高裁の決定は、言わば反対派の「実力阻止」を難しくするものです。
沖縄県東村高江のヘリパッド反対運動へのスラップ訴訟でも、この3月に那覇地裁が1人を妨害行為と認定しました。今回の上関では、漁船やシーカヤックなどを使っての反対行動でした。海上ですから座り込むわけにもいかず、どこまでが「実力阻止」となるのか甚だ疑問です。中電が住民らに1日当たり70万円の制裁金を求めた間接強制の訴えも広島高裁で抗告中であり、この最高裁の決定による影響が心配されます。