静岡県議会は、中部電力浜岡原発再稼働の是非を問う住民投票条例案の原案と、超党派の議員が提出した修正案をともに否決。東日本大震災後、原発立地県で初めてとなる住民投票は実現できませんでした。
今回の住民投票に賛成した署名は16万5000筆余。必要数6万2000を大幅に超える署名を集め、川勝平太県知事も賛成の意見書を付けて県議会へ条例案を提出しました。県民の意思を直接問う絶好の機会だったはずですが、投票年齢や時期など形式的なことに議論が集中し、原案は何と全会一致で否決。これには開いた口が塞がりませんでした。
静岡県は、かねてから東海地震などの脅威と隣り合わせにあります。県民の不安は切実でしょう。自民党会派は「国策である原発再稼働の是非を住民投票で問うのは妥当ではない」と反対理由を述べましたが、それではこの16万5000もの民意をどう考えるのでしょうか。議会は本来民意を反映する場所のはず。しかしその役割を果たさないのが現状なのです。
先日の小欄で、沖縄・与那国町での自衛隊基地建設をめぐる住民投票を取り上げましたが、度重なる民意無視こそが政治への不信を増大していることに、議員はなぜ気づかないのでしょうか。県議会は、今回の条例案を否決して終わりではなく、県民の考えを広く聞く場を設けるなど、今後その民意をどのように集約するのかを、真剣に考えなくてはなりません。