小欄でもお伝えした佐賀県武雄市の新図書館の件ですが、 樋渡啓祐市長が批判的な記事を載せた地元新聞のブログに抗議し、新聞側がいったんは削除する(現在は改訂版を掲載)など、問題が次々と起こっているようです。
来年4月からカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に業務運営を委託する武雄市の新図書館。これを危惧する、元市職員で「武雄市図書館・歴史資料館を学習する市民の会」の代表世話人である井上一夫さんが、佐賀新聞社が運営する「ばってんがサイト」に「知的基盤を奪われる武雄市民」という文章を掲載しました。今まで市が行ってきた文化行政を振り返り、現市長の一時の思いつきでそれを壊さないように諫める内容でした。
しかしこの文章の「地震時にはこの蔵書は1階フロアに一気に崩落し、人的被害が出る可能性が強いと思っている」 という部分に市長が噛み付きました。確かに完成予想図を見ると天井まで本が連なり危険なように見えますが、転落防止用ストッパーがついているそうです。とは言え、この処置は市議会でも市民説明会でも報告されていないのですから、新聞社に抗議したり、井上さんを必要以上に攻撃するのはまったくの筋違いです。
むしろ問題は、そうしたわずかな過ちを槍玉に挙げながら他の批判に目をつぶる市長のやり方でしょう。井上さんが指摘する、高い書架や狭いキャットウォーク(点検通路)の不便さに答えようとはしていません。15日には市教育委員会が新図書館構想報告会を開催しましたが、市ホームページなどでの広報をせず、集まった市民は20人ほど。武雄市と樋渡市長はSNSよりも先に、ちゃんと情報を公開・発信し、説明責任を果たすべきです。
(参考資料:「抗議いただいた件の事実確認について」(ばってんがサイト事務局))
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