北に平安神宮が広がり、西に琵琶湖疏水が流れる京都会館は、京都市民の文化活動の拠点として親しまれてきました。老朽化を理由に10日から第1ホールの解体工事が始まりましたが、工事凍結を求める声も上がっています。
京都会館は、昭和を代表する建築家・前川國男の設計により1960年に開館し、京都の戦後復興の象徴と言われました。コンクリート建築を伝統的な景観に融けこませ、馴染ませて独特の空間をつくりあげ、この年度の日本建築学会を受賞するなど、名建築としても知られます。近年ではDOCOMOMO Japanにより、日本を代表する近代建築「DOCOMOMO100選」にも選ばれて海外にも広く紹介されるなど、高く評価されています。
今年6月、京都市は改修が必要であるとして「京都会館再整備基本計画」を策定。しかしこの計画決定の経過は不透明であり、市民に公開されないままです。京都会館の価値を認めるICOMOS(イコモス=世界記念物遺跡会議)は「危機警告」を出しました。これまでに発せられたのは、ストックホルム市立図書館と香港の中央政庁の建物の解体に対しての2件だけで、建物の破壊を取り止めさせる重要な役割を果たしたということです。
ほかにも日本建築学会長やDOCOMOMO Japan、京都弁護士会会長、京都市が設置した「京都会館の建物価値継承に係る検討委員会」などから保存要望書や意見書が送られましたが、市は無視する形で解体工事を始めました。大阪中央郵便局や旧沖縄少年会館(久茂地公民館)でも繰り返された、有識者や地域住民の声を聞かず、既存建築への敬意を持たぬまま「解体ありき」で突き進む行政のあり方に疑問が残ります。